リハビリテーション・サミット2015(11/3)

日時:平成27年11月3日
場所:帝京平成大学 沖永記念ホール
主催:全国リハビリテーション医療関連団体協議会

このサミットは、これから地域包括ケアを推進するためのリハビリテーションのあり方に関しての普及啓発活動が、国民や専門職のあいだに必要であるという観点から、今年度、主に医療や介護などに携わる専門職を対象にして開催されました。概要は以下の通りです。

 

1.講演:地域包括ケアとリハビリテーションの役割

地域包括ケアシステムとは、老若男女全ての人々に対応する体制づくりである。これからは異なる地域の文化や伝統、歴史、他の住民との関わりの住まいに居て、異なる人生の目標と価値観を持った人々が、その人らしく生きていくために、地域づくりをしていかなければならない。

在宅医療・介護に関しては、包括支援センターが地域ケア会議というエンジンを、介護保険法と言うガソリンを使って、有機的で実行力のある課題を導き出し蓄積させていくことで、市町村ごとの課題を地域ケア推進会議まで押し上げていくことが必要である。

連携に関しては、医療内連携が、本人を中心としたチーム医療となっていないことが問題である。関連職種がただ集まった医療チームであり、本人や家族が中心メンバーとなり構成されるべきである。医療と介護連携は、介護側からすると医療側への敷居が高く近寄りがたい現状であり、医療側から手の内を見せて、アプローチしていく必要がある。

介護予防事業に関しては、機能回復はひとつのプロセスであり、その人の人生の目標にあっているかどうか、その人にとって価値のあるものかどうか、その人の自己実現を支援できるものなのか考えるべきである。多様な価値観を理解し、寄り添い、共有し、支援していくことが、これからの専門家の生きる道である。

今後の課題としては、介護保険サービスを利用している方の7割は、『低栄養のおそれ』または『低栄養』という先行研究があり、高齢者の低栄養状態の克服があげられている。また、同じく介護保険サービスを利用している高齢者の一番の楽しみは食事を食べる事であり、栄養問題と並行して、口から食べる楽しみを継続していくための取り組みが大切である。また、認知症に関しては、2025年には高齢者の5人に1人が認知症となるといわれており、国を挙げて取り組まなければならない課題という認識で進んでいる。

 

2.講演:今後の地域包括ケアシステム構築にリハビリはどのような役割を果たしていくのか

40年前広島県にある公立みつぎ総合病院では、在宅ケアによるねたきりゼロ作戦と医療の出前を行い、保健・医療・福祉の連携による地域包括ケアシステムを構築して地域ぐるみのケア体制を作り上げた。現在、平均寿命が延伸している一方、健康寿命とは10歳程度差がある。最期を迎える場所は自宅でありたいという希望はあるが、病院で亡くなるケースが多い。そのため、QOLやQODの低下を防ぐ取り組みをどのように行っていくかが重要である。

地域包括ケアシステムの構築の課題として、専門職の地域包括ケアシステムの理解向上や、『人』を見る、『生活』を見る、『連携』できることが重要であり、医療から介護がシームレスに連携することが求められる。地域づくりとは、『場』の提供、『場』づくりが大切であり、地域の人々の主体性を大切にして、住民が参画することで、コミュニティーとなりえる。広島県では、ケアマネマイスター制度なども導入されている。

 

3.シンポジウム:まとめ

これからは、生活の場にリハビリという資源を展開させ、地域の場における引き出しを増やしていかなければならない。ご本人が継続性を持って、暮らしや命を高め、旅路の先の見通しを目標共同体(ご本人、家族、地域の人、多職種)が共有し機能させていくことが重要であり、ただ行程表を進めるだけのものではない。あらゆるステージのスタッフがそのような視点を持って関わらなければ、シームレスな連携は難しい。地域包括システムにおいては、自助、互助、共助、公助の機能を地域の実情に合わせ、効果的・効率的に運用することが重要であるが、現在リハビリテーション専門職の約8割が、病院・施設で働いている。自助(自助力の向上・維持)、互助(住民支え合いの活動をリハビリ専門職が推進する)などの取り組みの推進が喫緊の課題である。今後、リハビリ専門職は、PTOTST共同して、市町村レベルで行政と関わる体制作りを進めていかなければならないことを自覚し、各地域が目的意識を持って取り組むことが必要である。

 

リハビリテーションサミット2015宣言文

私たちは人生のあらゆるステージで変化するニーズを踏まえて、その人の望む生活の実現を目指したリハビリテーションを実践します。

さらに、住民の自助力の向上及び支え合い作りなどを支援し、地域包括ケアが全国各地で推進されるよう努めます。

 

(板東)

平成27年度地域包括支援センターネットワーク機能強化研修(10/16)

日時:平成27年10月16日
場所:郡山市中央公民館 多目的ホール
主催:福島県

市町村及び地域包括支援センターにおいて個別ケースを検討する地域ケア会議を実施しているところは多いですが、地域課題を検討する地域ケア会議を実施しているところは少なく、地域課題が地域づくり・地域資源開発・政策形成に結びついていない現状があることから、今回の研修会が行われました。福島県言語聴覚士会からは、合計10名(理事4名、会員6名)、会津、県中(+郡山市)、県南、県北、いわき、相双のすべての圏域から参加することができました。

まず、地域包括支援センター設置運営要綱の改正について説明がありました。地域包括支援センター強化のためには、適切な人員を配置し、市町村やセンター間の役割分担と連携強化を図り、効果的なセンター運営が継続することが求められています。地域ケア会議を努力義務化し、関係者に必要な協力を求めながら実施していく中で、個別ケースから地域課題を検討し、市町村に集約していくことが必要です。市町村は地域包括支援センターと連携しながら、生活支援・介護予防サービスの充実と高齢者の社会参加にむけて、生活支援コーディネーターや協議体の配置などの取り組みを進めていくとのことでした。

次に、地域課題の検討を行う地域ケア会議について説明がありました。地域ケア会議には、地域包括支援センター主催の地域ケア個別会議と市町村主催の地域ケア推進会議があります。地域ケア個別会議の機能は、①個別課題解決機能、②ネットワーク構築機能、③地域課題発見機能であり、地域ケア推進会議の機能は、④地域づくり・資源開発機能、⑤政策形成機能です。個別の事例が蓄積されていく中で各地域の課題が抽出され、高齢者個人に対する支援の充実(+社会基盤の整備)を行っていくことで、地域で尊厳のあるその人らしい生活の継続を得られるようにしていくのが目的です。地域ケア会議には総合的な判断ができるよう多職種を選出し、質の向上を図る必要があります。そのためには、日頃からのネットワークづくりが必要です。

その他、実践報告として白河、石川町の地域ケア会議の取り組みのご講演や地域課題を資源改札や政策形成へつなげるグループワークなどを行いました。

研修会に参加して、地域ケア会議の位置づけや取り組みの内容を理解することが出来ました。今後、各支部PT・OTや各市町村との情報共有していくためにも、連携を高めながら、少しずつ協力体制を構築していくことが必要と思われました。
(板東)